11 夢

20190327 水曜日

 

 悪夢を見る。それもしばしば。

 戦場で空襲に遭い、逃げるなか背中から撃たれる夢。ズキズキとした痛みを感じながら逃げ惑ったものの、海へと逃げてその後の記憶はない。夢であることを知りながら夢を見ていたが、ひどく疲れた。

 あるいは冷笑される夢、何かに急かされる夢、ここ何ヶ月かは、何一つ良い夢だったと思える夢を見ることができないのだ。

 日本海側の、陰りが満ちた都市のために作られた、光の入らない家のせいだろうか?そも、この都市で暮らし続ける限りは陽光をめいっぱいに浴びることができない。なかなか快適な家ではあるし、夏は頰をなでるそよ風が心地よいものだが、それ以上に、雪や雨雲が陽光を阻むことが、どうも私を困惑させ、満ち足りぬ居心地の悪さを感じさせているようだ。潑剌たる春も、苛烈な夏も、感傷的な秋も、ここにはない。あるのは、鬱屈とした曇天、寒気と雪。祖父と祖母、父と叔父が、祖父が大学教員のポストを得たことで、私の暮らす都市から200キロほど離れる地方都市Oに移った際、祖母が鬱病に罹患したと聞いている。姑を厭うていた母は、祖母の性質に因るものだと言っていたが、もしかすると、この先の見えない寒気に神経を病んだのかもしれない。

 初めはこの都市で働き、暮らせることを心から喜んだものだけれど、そろそろ陽光の輝き、樹木の芽吹きの力強さ、春の薫りが届けられる場所に帰りたい。そうすれば、眠気にさそわれ、プーランクの「メランコリー」のような、気の遠くなるくらい甘やかで美しい夢が見られるかもしれないから。